人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2016年6月 1日

失敗から学べないのは?(ビジネスサプリメント639号)

懲りない三菱自動車というタイトルで書かれた日経新聞の「経営の視点」というコラムを読んだ。私も数々の失敗の連続だったが「失敗こそ学べて次に活かせる」と思っていたが、三菱自動車はそれが出来なかったのだ。まさに「社内に答えあり」が置き去りにされていたのである。過去の成功体験など、この変化の激しい世の中では即陳腐化してしまう。
「CFT最終報告書」によると、「組織がたこつぼ(極度に縦割り)化していて横串が通っていない」とある、これはご支援していた企業にも共通していた内容であり、私が失敗経験をした組織もまさにこの典型であった。同じ情報を同じ価値観で受け止め総力で解決していく姿勢に欠けているから、大きな問題点が生じてくるのである。
「上を見て発言を控える習慣が染みついている」ともある。これは良く分かる、上にもの申して嫌がられたら、自分の立場も危うくなる、場合によっては左遷かクビ、ここは黙っていた方が得策と考えて保身に走るのである。組織を考えず、まずは自分自身の立場を考えてしまうものだ。
「人事異動が少ないから不正が防げない」も今では良く分かる、同じ部門にいるとおかしいと思うことも、これで当たり前と思ってしまうものなのだ。スペッシャリストを育てるという意味合いなら仕方がないかも知れないが、幅広く経験を積むことも肝要である。金融機関のようにあまり頻繁に異動があると、生産性が下がることも否めないが。
「2度目の失敗を防ぐ教育の仕組みが不十分」もトップが現場を見ていないからだと思う。「まさに現場は命」なのだ、ある大手企業のトップが、地方支店を訪れた時に欠品があった、「この店の店長はクビだ」と叫ばれたとか?もうこれは恐怖と萎縮と、もの言えない風土の典型であり、トップの姿勢が変わらない限り救われない。
では何故三菱自動車は過去の失敗を活かせなかったのか?「ブランドに甘えたトップ、専門部門に任せっきりで問題を発見しようとする姿勢がトップには全くなかったのではないだろうか?」。
偉そうなことは言えないが、破綻したらどんなに一生懸命に頑張ろうと、全て悪とみなされ、結果現場で頑張っていた人たちが一番辛い立場に立たされ,何も報われないのである。このコラムにあったように「文化や風土を改革するのに必要な答えは、社内外にはなく、社員1人ひとりの中に存在するのである」。間違ってもおかしいと思えば「まぁいいか」なんて思えばもうお終いだ。大きな組織も中小企業も「気楽にまじめな話が出来る風土」が求められるのは今しかない。

2016/06/01 08:31 |

2016年6月14日

一億総活躍プラン(ビジネスサプリメント640号)

政府は少子高齢化の解消などに向けた「ニッポン一億総活躍プラン」を発表した。「同一労働同一賃金」は非正規労働者の待遇改善を目指す目玉政策である。
以前ご支援していた企業でパート社員で毎月の稼働日数により月額賃金が変わり、生活が安定しない母子家庭の方がおられたのを記憶している。
最近驚いたのは定年退職後に再雇用されたドライバーの方々に賃金格差を設けたトラック事業者を違法とした裁判判例のニュースであった。
そうすると、先日の日経新聞に一億総活躍を目指すなら「正社員改革こそ本道」と題したコラムが掲載されていた。少しご紹介すると、「ニッポン一億総活躍プラン」には、女性が仕事を持ちながら子供を産み育てられるよう長時間労働を是正したり、非正規社員の賃金を上げたりするための政策がいくつも並んでいる。何故日本は長時間労働が定着しているのか、原因を見定め、そこに切り込む必要があるという内容だった。
長時間の残業や休日出勤の根底には正社員の働き方があり、職務の範囲が限定されず、このため構造的に仕事が増えがちになるとあった。
非正規社員の処遇改善も、壁になるのは正社員という雇用のあり方ではないかという問題提起である。正社員は職務内容が一定しない、正社員と非正規社員が「同一労働」と認められるケースはどこまであるだろうか。世界の中で日本の正社員は特異な存在、雇用契約は一般に欧米もアジアも具体的に職務を決めて結ぶが、日本はそうでない。時間外労働や休日労働は世界の大半の国が厳しく規制しているが、日本は36協定によって事実上、労働時間を際限なく延ばせることが出来る。コラムの中で水町東大教授の説明では、日本の特徴は「解雇に関する厳格な規制」と、これとは対照的な「労働条件に関する柔軟な規制」にあり、労使協調のもと、日本企業は労働時間や賃金を柔軟に調節することで景気変動に対応してきたと述べられておられる。
日本は1人あたりの労働生産性は14年にはOECDに加盟する34ヶ国中21位と低迷しているようだ。経営環境が変われば雇用慣行も変わっていかなければならない。会社と個々の社員とが、職務や労働時間などを明確にして雇用契約を結ぶようにならなければならない時代に突入している。ダーウィンの進化論ではないが、力のある企業が生き残るのではない、実際に力があると思われた企業がどんどんリストラしているではないか。これからは経営環境の変化に柔軟に対応した雇用慣行を生み出せる企業のみが生き残るのではないだろうか。

2016/06/14 09:42 |

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