人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2016年6月14日

一億総活躍プラン(ビジネスサプリメント640号)

政府は少子高齢化の解消などに向けた「ニッポン一億総活躍プラン」を発表した。「同一労働同一賃金」は非正規労働者の待遇改善を目指す目玉政策である。
以前ご支援していた企業でパート社員で毎月の稼働日数により月額賃金が変わり、生活が安定しない母子家庭の方がおられたのを記憶している。
最近驚いたのは定年退職後に再雇用されたドライバーの方々に賃金格差を設けたトラック事業者を違法とした裁判判例のニュースであった。
そうすると、先日の日経新聞に一億総活躍を目指すなら「正社員改革こそ本道」と題したコラムが掲載されていた。少しご紹介すると、「ニッポン一億総活躍プラン」には、女性が仕事を持ちながら子供を産み育てられるよう長時間労働を是正したり、非正規社員の賃金を上げたりするための政策がいくつも並んでいる。何故日本は長時間労働が定着しているのか、原因を見定め、そこに切り込む必要があるという内容だった。
長時間の残業や休日出勤の根底には正社員の働き方があり、職務の範囲が限定されず、このため構造的に仕事が増えがちになるとあった。
非正規社員の処遇改善も、壁になるのは正社員という雇用のあり方ではないかという問題提起である。正社員は職務内容が一定しない、正社員と非正規社員が「同一労働」と認められるケースはどこまであるだろうか。世界の中で日本の正社員は特異な存在、雇用契約は一般に欧米もアジアも具体的に職務を決めて結ぶが、日本はそうでない。時間外労働や休日労働は世界の大半の国が厳しく規制しているが、日本は36協定によって事実上、労働時間を際限なく延ばせることが出来る。コラムの中で水町東大教授の説明では、日本の特徴は「解雇に関する厳格な規制」と、これとは対照的な「労働条件に関する柔軟な規制」にあり、労使協調のもと、日本企業は労働時間や賃金を柔軟に調節することで景気変動に対応してきたと述べられておられる。
日本は1人あたりの労働生産性は14年にはOECDに加盟する34ヶ国中21位と低迷しているようだ。経営環境が変われば雇用慣行も変わっていかなければならない。会社と個々の社員とが、職務や労働時間などを明確にして雇用契約を結ぶようにならなければならない時代に突入している。ダーウィンの進化論ではないが、力のある企業が生き残るのではない、実際に力があると思われた企業がどんどんリストラしているではないか。これからは経営環境の変化に柔軟に対応した雇用慣行を生み出せる企業のみが生き残るのではないだろうか。

2016/06/14 09:42

お問い合わせ