人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2016年7月 1日

理論より実践(ビジネスサプリメント641号)

先日の日経新聞「あすへの話題」で丸紅会長の朝田照男氏のコラム「経営の要諦」を読んだ。朝田氏は経営者のミッションとは、「持続的成長を通じて企業価値を高め、全てのステークホルダーに報いることだ」と述べられている。
破綻した前々職の考え方は「会社の永続的発展と従業員の豊かな生活」であった。しかし今思うと何かが抜けている、非常に内向き的な社是で、外に目を向けていなかったのではないか。
朝田氏曰く「経営とは実践であって理論ではない、ブレない判断力、勇気ある決断力、スピード感のある行動力、そして何と言っても新たな視点を切り開き、同時に困難を克服する情熱と執念なくしては成り立たない」と述べておられた。
全く同感で凄く心に響くものがあつた。
経営書は本屋やアマゾンに山ほど出ているが、読んだから成功するのか?極めて疑問である。理論は無いよりあった方が良いのは当たり前であるが。
大手企業でも人員削減が叫ばれて久しいが「企業は人」を忘れているように感じる。特に業績が悪くなると「人件費はコストであり資産とはみなされない」。
直近のニュースでは、シャープを買収する予定の台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、国内外で7千人規模の人員削減をするとか?あれ、雇用は守らないのか。大手企業の「リストラ部屋」の暴露本が沢山出ているのは驚きである。
何故もっと従業員に目を向けてコミュニケーションを高めないのか、現場の問題点を何故もっと早く聴きだせないのか?間違ってはいけないのは「トップが一方的に話をすると現場のモチベーションは著しく落ちるのだ」、そして真の問題点を取り損なうことにつながる。但し有事は別問題であるのは言うまでもない。
私は前々職が破綻して、またまた違うぶら下がり用の切れないロープを探し求めていた。切れないロープなどないのに。そして前職でロープを見つけたのであるが、このロープは少し違っていた。すなわちバンジージャンプのロープだった、勇気を持って飛び降りないと、後ろがつかえている、飛び降りるには勇気がいるが、案外気持ちの良いものかもしれない。そのことを理論ではなく、実践で学んだ。
これからの時代「宝である人材を切り捨てる」のではなく、また理論をふりかっざすのではなく、社内で多くのキラキラと輝く従業員と会話し、一緒に思いの共有をしていかないといけない。
先日ある講演会で色紙を頼まれ「変えるものを変える勇気と守るべきものを守る信念」と書いた。

2016/07/01 06:07 |

2016年7月15日

陰でこそこそ(ビジネスサプリメント642号)

以前ご支援していた企業で部下の方が上司とそりが合わずかなりの不満が溜まっておられたケースがあった。上司の方は最近昇格した方で、お話ししてみると部下のことをあまり嫌ってはいないようなのだ。しかし部下の方が凄く反抗的な態度や振る舞いをされるので、あえて指摘せず、無関心を装われたのだ。
部下の方にヒアリングしていろいろと聞いてみると「上司に計画性がなく、思い付きが多い、聞こえていないのか返事をしない、見ているとイライラする」と言うではないか。部下の方と何回かヒアリングをしていると、彼には組織人としての振る舞いが全くなく、全て自分が正しい、おかしいと思ったらそれを思い続けている様子。このような方に気づかせるのは相当難しい。
ましてやこの上司に不満を持っていそうな数人の輩達と「陰でこそこそ」と上司の悪口を言っているようだった。
私は彼に「素直に上司と話し合った事があるのか?」と聞くと、全くないと言うではないか。そこで今更言いにくいかも知れないが「タイミングを見つけて十分の素直な気持ちを話し合ったらどうか、そんな気持ちで毎日を過ごすことは、凄いストレスも溜まるし、生産性も上がらないよ」と諭したのである。
言いたいことがあるなら、陰でこそこそ言っても何にもならない、返って自分の値打ちを落とし、人間としての品格も下げるではないかとも付け加えた。
また上司には「彼のことをどのように思っているのか?どうあって欲しいのか?を素直に話し合うべきではないか」と伝えたのである。上司は毎日が忙しいし、煩わしいことは避けたいという気持ちが先行していたのである。そこで「このままでは、課内の雰囲気も悪くなるし、周りにも悪影響を与える、もっと部下に関心を持って振る舞って欲しい、人間は無視やシカトされると一番辛いものなのだよ」と諭したのである。
暫くはお互いに何もしなかったようだったが、数か月後両名のヒアリングの機会があったので、話し合ったのかを検証してみた。そうすると上司の方から声をかけてとことん話し合ったとのこと、部下に大きな誤解もあったそうだ。
また部下の方にも聞いたら、ゆっくりと話し合う機会があり、自分が間違って思っていたことにも気づき、何だかすっきりした、陰でこそこそ言うことほど最低な行為であり、自分が恥ずかしくなったと言うではないか。上司も嫌なことを避けずに、お互いに気軽に声を掛け合い、時には議論し合う職場が必要なのだということに気付いたと言われた。
上司は嫌なことから逃げないこと、部下は陰でこそこそ言うことは愚かなことで、思い込んではいけないということを学習したようだ。

2016/07/15 06:08 |

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