人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2016年9月 1日

昔の名前で出ています(ビジネスサプリメント645号)

「昔の名前で出ています」は小林旭さんの歌で、私もカラオケでよく歌う。
以前はいろいろな方の再就職をお世話したことがあった。履歴書をお預かりするのであるが「昔の名前で出ています」ではなかなか話が進まない。
ヘッドハンティング以外は昔の名前では出られないのである。「部長をやっていました」「課長を十年も続け、部下が百人いました」と言っても「それがどうしたの?」と言われることは間違いない。「ところであなたは、これから何が出来るのですか?」と問われた途端、もうしどろもどろになってしまう。自分の価値を正当に売り込もうと思う人なら「部長をしていました」とは言わないであろう。キャリアも役職も、その人を判断する基準にはならない。重要なのはキャリアの中でどんな成果を今まで挙げてきたのか?そしてその実力を転職先で発揮出来るかが問われるのである。仮に「社内での営業成績がトップでした」と言ったところで、その成績が転職先では平均的なものであれば、雇用者側には「過去の営業トップ」は魅力とは映らないのである。「これから何がしたいのか?」「その会社で何が出来るのか?」「会社にどのような利益をもたらせることが出来るのか?」が大切なのだ。もう昔の名前は忘れた方が良い。
ある広告会社で部長をしていた方が退職された。私に相談されたことは「つぶしがきかないのですよね、部長だと言っても、自分でデザインが出来るわけでもない、コピーが書けるわけでもない。ただ「部長をやっていました」ではどこも雇ってくれませんと、自信喪失の状態であった。その方の退職は会社の経費節減のリストラであったのだろうが、かなり有能な方であった。私は「もう肩書は外しませんか」と申し上げた。その上で、何が出来るかもう一度自分に問い直せば良いのである。まさにこの方の「踊り場=キャリアの棚卸」の時なのである。その方は自分でデザインをしたり、コピーを書いたりしないまでも、出来上がったものに対して的確な判断が出来る方であった。またクリエーターであるスタッフの心を一つにまとめるのが、大変お上手な方であった。そう「抜群のマネジメント力」のある方であった。私は「あなたは素晴らしいマネジメント」が出来るではありませんか、とお伝えした。今は異業種で第二の人生を謳歌されている。また転進して「こっちの方が向いている」と新しい発見をすることが出来るかもしれない。深刻にならず真剣に考えれば道は拓けるものだ。

2016/09/01 06:17 |

2016年9月15日

不安と不満(ビジネスサプリメント646号)

先日の日経新聞に「マネー研究所セレクション」と題し大江秀樹氏のコラムが掲載されていた。内容は「シニアは起業家の<卵>」と題する面白い記事だったので少しご紹介したい。実は私も60歳から起業して10年が経過したのでかなり興味深く読ませていただいた。
「最近は会社を定年退職した後に起業するという人が増えてきています。中小企業白書によれば、起業家で最も多いのが60歳以上で、その割合は約32%となっています⇒これには驚きである。起業はとてもハードルが高いと思われがちです。確かに起業支援の会社が<起業なんて誰でもできますよ>というほど甘いものではありません⇒全くそのように感じる。それでも起業は定年後の働き方の有力な選択肢だと思います。<中略>一般的にサラリーマンは仕事に対しての<不満>は一杯ありますが、食べていけるかどうかという<不安>はあまりありません。昔に比べれば、リストラや解雇というケースは増えているかもしれませんが、それでも普通に仕事をしていきなりクビになることはないでしょう。サラリーマンは嫌な仕事でも断れませんから、不満は生じます。一方、自営業の場合、不安はありますが不満はありません。サラリーマンとは逆で、嫌な仕事なら断ることができます。したがって突然仕事がなくなる不安はあるものの、自分がやりたくない仕事はやらずに済むので不満はないというわけです」。
私の場合は53歳で大型倒産を経験し、多くの仲間達に退職を迫り、当然私も辞めなければならなかった。いわゆる定年は経験していないのである。本来ならばその時点で起業すべきであるが、典型的な「ぶら下がり症候群」であり、自立出来ておらず、次のぶら下がるロープを探したのである。しかし次のロープはぶら下がりロープではなく、バンジージャンプのロープであり、飛び降りなければならなかった。その体験が凄く新鮮であり、定年なんてなかったけれど、起業を決意したのである。丁度60歳の時であった、飛び降りた経験があるから「不安は一杯だが何とかなる」という気持ちが醸成されていたのであろう。
そう、それ以降「不安は何時でもあるが、不満は全くない」。一番大切なことは、やはり健康・経済・生きがいの3つではないだろうか。今だから言えるのは、安易に起業すると大きな落とし穴もあるのではないだろうか、幸い今のところ私に落とし穴はなく、毎日元気に仕事をしている。

2016/09/15 07:05 |

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