人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

« 2016年9月 | メイン | 2016年11月 »

2016年10月 1日

バタバタさん(ビジネスサプリメント647号)

最近企業の個人ヒアリングをしていてよく聞く言葉は「この頃バタバタして1日が終わったら何をしていたのか?物事が進まず何だか虚しい気がします」と言うものだ。このような方々は与えられた仕事に熱心にお取り組みをされている場合が殆どであるし、極めてまじめな方が多い。突っ込んで聞いてみると「今日はこれをしよう!」と一応スケジュールは立てているが、必ずしもその通りにはいかないことが多いと言われる。そこで「どのようなことがスケジュールを狂わすのか?」とお尋ねすると、突発的な仕事や締め切り間近の仕事が多く計画通りにはいかないと思い込んでおられる様子が垣間見られ、それは仕方ないことだと半ばあきらめておられることが多い。そこでスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」を思い出した。最近は満画本まで出ているが、横軸に緊急性、縦軸に重要性のグリッドを作り4つの領域に分けた理論である。人間は緊急度の高い重要性の高い第一領域(締め切りのある仕事、クレーム対応等)を優先してしまい、緊急性はないが重要度の高い第二領域(準備や計画、人間関係作りなど)を後回しにすると言うものである。そう第一領域に振り回されているのだ。そこで「もう一度、仕事の再整理をして突発的な仕事が入ってきても良いようなスケジュール化をすれば」と申し上げるが、上手くいくことはまずない。要は従来の仕事の進め方の延長線上でしか考えられないのである。何が今一番重要な仕事であるのかを考え直さないと解決は難しい。また仕事を省くことも大切である、即ち「この仕事をしなくても良いのではないか?」「今この仕事をしなければならないのか?」「この仕事は誰かに任せることは出来ないのか?」などを考えないといけない。即ち従来の行動パターンから「新しい行動の習慣化」を考えるべきである。もっと突っ込めば「この仕事の目的は何か?」とか「この仕事の重要性は?」が希薄になってはいないだろうか。そこである人に自分の仕事を整理してもらい、重要度や目的意識まで突っ込んで考えてもらったことがあった。最初は邪魔臭いと言う抵抗感があったようだが「自分のため」と言うことに気づかれ、かなり突っ込んで整理をされた。そして一緒になってその内容を分析したことがあった。ご本人が「随分無駄な時間を過ごしていました」と言う言葉が印象的だったのを覚えている。そう従来の行動パターンから重要性を重視した新しい行動パターンに気づかれたのである。
その後お目にかかったが「バタバタしています」と言う言葉は言われなかった。

2016/10/01 07:09 |

2016年10月 6日

AIからIAへ(ビジネスサプリメント648号)

最近マスコミでもAI(人工知能)についていろいろな内容の記事やコメントが多く、目にしない日は無いぐらいだ。慶応義塾大学の山口高平氏のメッセージを読んだが素晴らしい内容なので一部ご紹介させていただく。氏は「メディアにAI(Artificial Intelligence)がよく取り上げられている、まず2010年10月、将棋の世界でAIがプロ棋士に挑戦した、このシステムは「あから」と呼ばれるもの、10の224乗が「阿伽羅」であり、将棋の指し手の組み合わせに相当する、膨大な数で「あから」は4つの将棋プログラムの合議制により、指し手を決めていく、一方「あから」の対戦を受けたのは、清水女流王将、対戦は中盤まではほぼ互角だったが、「あから」が王手を打たれそうな場面において、その王手を防ぐのではなく、プロ棋士さえも予想出来なった意表をつく手を指し、「あから」が勝利したとあった。またある新聞のコラムでは<今世紀半ばには、AIは人に代わって知的労働をこなす>予測もある、しかしAIの未来はどうか?AIが人にとって替わるような論ではなく、人・組織・社会との関わりを考えながら、人の社会生活を支援するAI、いわばIA(Intelligence Amplifer=人の知能増幅)が多面的に考察されるべき」と述べておられた。私はこのお考えに全く同感である。最近のニュースでは、将棋ソフトとプロ棋士が対戦する第1期電王戦二番勝負がソフト側の2連覇で終わった日、主催のドワンゴは来年春の電王戦に出場する棋士を決める第2期叡王戦に、あのスーパースター羽生善治王座(名人・王位・棋聖)が参加すると発表した。羽生王座が優勝すれば、公の場で初めて将棋ソフトと対戦することになるかも知れないとのこと、面白さはあるが怖さを感じるのは私だけだろか?
前職の社長近藤昇氏は、本年5月の日経新聞の一面に「AI社長の下で働けますか」という記事に触発され、現在「もし、自分の会社の社長がAIだったら」という本を上梓された。彼のブログでは社長の重要な役割は「決断」、いわゆる士業の分野はAI化するかも知れないが、日本がアピールした「おもてなし」はなくならないと述べておられた。そう某百貨店ではロボットでお出迎えなんて記事が掲載されていたが、全くナンセンスな話題である。そうすると先日の日経新聞の「かがくアゴラ」と題したコラムに「東京大学医科学研究所は血液がんの診断に、AI(人工知能)技術を活用した米IBMのコンピューター「ワトソン」を使い、治療に成功した、がん関連の遺伝子解析に取り組んできたヒトゲノム解析センター長の宮野悟教授はAIの力を借りてがんの診断・治療を大きく改善したい」と述べられていた。また最近のニュースでAIを活用して、がん患者に適した治療法を選んだり、患者が治療の悩みを解決したりできるサービスが開発されるとか、このようにAIがIAへと多面的に考察される時代になってきたのかも知れない。

2016/10/06 08:36 |

2016年10月16日

転がる石(ビジネスサプリメント649号)

最近転職を繰り返す人が多くなったような気がする。私は過去1回の転職の経験をし、違う文化、違う人たち、違うステージで戸惑うこともあったが学ぶことの方が多かったように思う。しかし何度かもう辞めようと思ったこともしばしばであった。トップの考え方や、自分に合わない仕事の進め方、仕事に対する取り組み方の違うことに大変迷ったことも多かったが、それを乗り越えると上手くはまり込んで新しい次のステップを見つけ出したものだ。
最近転職される方々を見ていると、もう我慢できない、この場面から逃げようとされているケースが多いのではないだろうか。逃げては追いかけてくるばかりで全て悪い方向に向かってしまう。逆に追いかければ、本質が見えてくるし、学ぶべき点も理解出来るように感じるのではないか。
しかし転職は3回までと言われることが多いが、事実どうしても合わない会社というものはあるものだ。そんな場合は早く見切りを付けて違うステップに移ることも肝要である。少なくとも同じ人間が、A社ではうまくいかず、B社では能力を開花させるという事例をよく見かける。よって見切りの付け方も大切となってくる。
入社して数か月ではお互いに判断がつかないだろうし、せめて「意志(石)の上にも3年」は頑張って、それでもだめなら悲嘆にくれず、次のステージを探すのもひとつの考え方でもある。
「転石苔(こけ)を生ぜず」ということわざがある。このことわざには2つの意味があるようだ。「転職や転居ばかり重ねていると、財産も地位も身につかない」という意味である。またもう一つは「常に活動している者はいつまでも古くならないし苔など生えない」という解釈である。前者は定職・定住を促すものであり、後者は絶え間なく研鑚することをすすめている。
時代の移り変わりが激しく、リスクの多い今日だ。「リスク」とはイタリア語の語源で「勇気を持って試みる」とある。今時代が我々に求めていることは「変えるべきものを変える勇気と、守るべきものを守る信念」を大切にしなければならないということかも知れない。

2016/10/16 14:38 |

お問い合わせ