日経新聞の大機小機に「真の働き方改革」と題して素晴らしい内容の記事が掲載されていたので少しご紹介する。
政府は1ケ月の残業時間の上限を60時間とする案を働き方改革実現会議で示した。ここでは、仕事の生産性向上と効率化により、働き過ぎを是正して労働時間の削減を図ることを訴えている。また記事には、最近は生産性向上のために、人口知能(AI)やロボットを有効に使おうという論調も多いが、本当に生産性を向上させれば、長時間労働など働き方に関する課題は解決出来るのだろうかという疑問が述べられていた。
産業用機器だけではなくICTやPCの活用や進化で、人間の生産性は高まったのは確実であるが、依然残業時間は減らず、電通のように大手会社なのにあってはならない過労死等が相変わらず残っている。生産性の向上や効率化だけでは永遠に解決出来ない問題かもしれない。記事は物の豊かさより心の豊かさが求められるのではないかとの問題提起だった。筆者も全く同感である。
今働く人達の多くは物の豊かさではなく心の豊かさを求める傾向が強いと感じる。現実国民生活に関する世論調査では、1975年にはモノの豊かさを重視する人が41%なのに対し、心の豊かさを重視する人は37%だったらしい。それが90年には逆転し、昨年の調査ではその差は倍以上に広がっているとのこと。
つまり「働き方改革」は仕事も含めての幸せづくりのための「生き方改革」の手段であると考えるべきではないかという論調だったのである。
ひるがえって、今電車に乗れば7から8割の人々がスマホを見ている現実、昔のように新聞を広げて4つ折りにしている人は見かけなくなった。ましてや本を読んでいる人は皆無の状態が続いている現実がある。人間よりも高度なICT器具に必死になって合わせている現実がある。変な言い方であるが器具に人間が使われているかもしれない。
先日母校で講演した時、司会の教授から「IOTやAIが氾濫している現実をどのように思われますか?」というご質問をいただいたことを思い出した。
その時は「器具に人間が使われるのは良くない、使いこなして余暇を作るぐらいになって欲しい」とお答えした。
「働き方改革」は労働時間の削減や生産性の向上だけではなく、「生き方改革」の手段として捉えたいものだ。
2017/03/15 06:24