人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2017年3月 1日

74歳までは備える期間(ビジネスサプリメント662号)

日本老年医学会理事長の楽木 宏実氏が語られていた記事が日経新聞に掲載されていた。少しご紹介すると<最近の科学データを分析したところ、高齢者の身体機能や健康状態、知的能力は年々向上しており、現在の高齢者は10年前と比べ5~10歳は若返っているといえることが分かった。これは元気な高齢者が増えたという国民の実感とも合致している。そこで、これまで「前期高齢者」としてきた65~74歳の人を「準高齢者」、「後期高齢者」の75~89歳を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」とするよう提言した、特に「準高齢者」の年齢層はおしなべて元気で、その多くは身体や精神の機能が衰えながらも緩やかなペースで活動できるだけの能力を保っている。働く人、年金で悠々自適の生活を送る人、ボランティアなどで支える側に立つ人など、多様な選択が出来るだけの心身能力がある、ということだ>と述べておられた。
先般前職のブレインワークスで「シニヤビジネスセミナ~シニア起業の活躍事例」と題して東京・大阪・ベトナムとのネット配信でセミナーが開かれた。
冒頭の近藤社長の後、私も少しお時間をいただいて講演させていただいた。
今回のセミナーは近藤社長が「もし波平が77歳だったら?」という本を上梓され、その続編である「私たちは生涯現役!もし、77歳以上の波平が77人集まったら?」という本を上梓されたのがきっかけで開催された。
その本に掲載されている77歳から96歳までのみなさんの中から数人が事例発表をされた。ともかく元気である、私も70歳で古稀を迎えたが、この方達に比べればまだまだ、若輩ではないかと痛切に感じた(笑)。みなさんイキイキされている、そして好奇心が誠に旺盛、歳なんて感じないのである。
私も65歳になった時「高齢者」と呼ばれたことがあったが、何か違和感があった。そう「アクティブシニア」という言葉が最適ではないか。まさにサミエルウルマンの「青春の詩」そのものであった。
リンダ・グラットン教授らが書かれた「LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略」という本で興味深い論点がある。<過去のデータから今後を予測すると、今日の日本で生まれる子供の半数以上は少なくとも107歳まで生きる、これまでの人生は60歳まで働き、老後生活に入るステージだった、それが今後は80歳まで仕事をしたり、趣味やボランティアに生きたり、また仕事に戻ったりのマルチステージになる>とある。
まぁ個人差があり柔軟な対応が必要なことは言うまでもないが、シニアビジネスセミナーで見た方達は「生きがい就労することで凄くお元気なのだ」。
ただ一つこころしておかないといけないことは「老害」と呼ばれる前にハッピーリタイアを忘れてはならない。

2017/03/01 06:51 |

2017年3月15日

働き方改革(ビジネスサプリメント663号)

日経新聞の大機小機に「真の働き方改革」と題して素晴らしい内容の記事が掲載されていたので少しご紹介する。
政府は1ケ月の残業時間の上限を60時間とする案を働き方改革実現会議で示した。ここでは、仕事の生産性向上と効率化により、働き過ぎを是正して労働時間の削減を図ることを訴えている。また記事には、最近は生産性向上のために、人口知能(AI)やロボットを有効に使おうという論調も多いが、本当に生産性を向上させれば、長時間労働など働き方に関する課題は解決出来るのだろうかという疑問が述べられていた。
産業用機器だけではなくICTやPCの活用や進化で、人間の生産性は高まったのは確実であるが、依然残業時間は減らず、電通のように大手会社なのにあってはならない過労死等が相変わらず残っている。生産性の向上や効率化だけでは永遠に解決出来ない問題かもしれない。記事は物の豊かさより心の豊かさが求められるのではないかとの問題提起だった。筆者も全く同感である。
今働く人達の多くは物の豊かさではなく心の豊かさを求める傾向が強いと感じる。現実国民生活に関する世論調査では、1975年にはモノの豊かさを重視する人が41%なのに対し、心の豊かさを重視する人は37%だったらしい。それが90年には逆転し、昨年の調査ではその差は倍以上に広がっているとのこと。
つまり「働き方改革」は仕事も含めての幸せづくりのための「生き方改革」の手段であると考えるべきではないかという論調だったのである。
ひるがえって、今電車に乗れば7から8割の人々がスマホを見ている現実、昔のように新聞を広げて4つ折りにしている人は見かけなくなった。ましてや本を読んでいる人は皆無の状態が続いている現実がある。人間よりも高度なICT器具に必死になって合わせている現実がある。変な言い方であるが器具に人間が使われているかもしれない。
先日母校で講演した時、司会の教授から「IOTやAIが氾濫している現実をどのように思われますか?」というご質問をいただいたことを思い出した。
その時は「器具に人間が使われるのは良くない、使いこなして余暇を作るぐらいになって欲しい」とお答えした。
「働き方改革」は労働時間の削減や生産性の向上だけではなく、「生き方改革」の手段として捉えたいものだ。

2017/03/15 06:24 |

2017年3月27日

気づきを待つ(ビジネスサプリメント664号)

筆者が今の仕事を始めだした頃、PHP研究所でかなり講演をさせていただいた。東京での講演会の時、当時社長であった江口克彦氏が後ろで聞かれていたのである。終了時に江口氏から「上司の哲学」という江口氏著の本をサイン入りでいただいたのを思い出した。松下幸之助氏に学んだ、人を育てるコツ・活かすコツと副題にあつた。松下氏のもとで直接指導を受けられた経営指導論が満載であった。
今でも忘れないエピソードが掲載されていた。幸之助氏が江口氏に「ハーマン・カーン」とう学者が松下氏に会いに来ることになった。未来学者のカーン氏は「21世紀は日本の世紀」と公言し、当時日本でも話題になっていた人物だったのである。
ある日、松下氏は江口氏に「君、ハーマン・カーンという人を知っているか?」と尋ねられたそうだ。江口氏はすぐさま「ハーマン・カーンという人は、21世紀は日本の世紀だと言っているアメリカのハドソン研究所の所長で、未来学者です」と答えられた。松下氏は「そうか」とうなずかれたとか。
そして次の日も「君ハーマン・カーンという人はなにをする人や」と聞かれたらしい。再び上記と同じ回答をされたのである。そうすると「そうか」とうなずかれた。3日目もまたまた「君、ハーマン・カーンという人は誰や」と言われる。江口氏は半ば憮然として、少し語気を強めて同じように答えられたらしい。私の言うことを真剣に聞いてくれているのだろうか?とイライラしたとある。そこでハタと「そうか、3日間も続けて同じ質問をされたのは、自分の説明が足りなかったからだ」と気づかれたのである。即書店に行き「西暦2000年」というカーン氏の著書を手に入れて、徹夜をして大作を読破し、内容の概略を記録用紙3枚にまとめて、朗読してテープにまでまとめられたのである。
そして意気揚々と松下幸之助氏のところへ向かわれた。なかなか松下氏はハーマン・カーンについて聞かれなかったが、昼食時「君、今度な・・」と言われた時、江口氏は心弾む思いで30分ほど話され、松下氏は熱心に聞かれたそうだ。
ところが江口氏は吹き込んだテープを松下氏に話された時に手渡すことを忘れたので、お帰りの車に乗られる時に渡されたのである。翌朝松下氏は「君、なかなかいい声しとるなぁ」と言われたとか。
「気づき」には時間がかかることが多い、松下氏が「聞いているのは、そんなことではない、もっと詳しく答えてくれ」と言えば済むことなのだが、それでは人は育たない。
私はこの本から「気づき」の大切さを学び「気づきナビゲータ」と名乗ったのだ。「上司の哲学」は今でも書棚の中心に飾っている。

2017/03/27 05:49 |

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