元プロ野球監督の権藤博氏がコーチ時代に何人もの監督に仕えて「もし自分が監督になったらこれだけは絶対にしない」と感じたことを記載された「教えない教え」と言う新書を以前に読んだことがある。権藤氏がアメリカの教育リーグに行かれた時に次のようなことを学ばれたことが監督になられて生きてきたと言われる。
あるアメリカのコーチが選手に「バッティングゲージの右側のネットに打球を当てろ、そうするとライトヒッティング(右打ち)が出来る、ボールが当たったら自分を呼びに来い」と指示をされたらしい。しかしその選手は出来ずにそばにいた権藤氏に聞いてきたので「もっとバックスイングの時にタメをつくりなさい」と教えられたと言う、そうすると選手の打球が右側のネットに当たるようになったらしい。その選手はコーチに「出来ました」と言うと、「誰に教えてもらった?」となり、権藤氏だと判明したようだ。そのコーチは権藤氏に「教えてくれるのはありがたい、でも教えられて覚えた技術はすぐに忘れてしまうものだ、それとは逆に自分で掴んだコツと言うものは忘れない、だから我々コーチは選手がそのコツを掴むまでじっと見守ってやらなければいけないのだ」と指摘されたそうだ。コーチに「Don't over teach」 と言う言葉を言われ、その言葉が忘れられないと言われていた。どうしても指導者は教えたくなるものだが、丁寧に助言をし、我慢強く見守っていく姿勢を保つことが大事と述べられている。
まさに本人の「気づき」が大切であり、そのことが自分のものとなるのである。理解出来るまで待たねばならないし、我慢が必要なのだ。前職時代にも「こうすれば良い!」と言わずに、我慢強く本人に気づかせたことが多かった。例えばお客様の接遇においてさわやかな笑顔を忘れないようにするためには「笑顔を絶やさないように!」では徹底出来なかった。そこで「あなただってお客様!」と言うコピーを考え「自分たちがお客様になった時にどのような接遇をして欲しいか?」を考えさせたのである。そうすると、つくり笑顔ではなく、心からの笑顔で素晴らしい応対が出来た販売員が大勢出て来たのを思い出した。そう!教えると言うことはいかに「気づきをナビゲート」させるのかが大切であり、本人が主体的に動けるようにすることであるのを忘れてはならない。それにしてもイチローの日頃の心身鍛錬と数々の大記録、マー君の日米通算150勝は素晴らしい。
2017/10/18 12:42