人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2018年10月 1日

自分(ビジネスサプリメント707号)

関西では相手のことを名指す時、「自分は」という時がある、本来は「君は、あなたは、おまえは、○○さんは」なのだが。
あるアスリートが「明日はもっと自分のモチベーションを高めてがんばります」というコメントをしていたのを記憶している。この言葉は主語が「自分」なのである。主語が自分でなければ、誰かの所為(せい)にして逃げてしまい、「他責」にする。他責は楽であるが、次が見えない。自ら原因を追究し、努力していこうという姿勢にはならず、ますますモチベーションが落ち悪循環になることが多い。
お手伝いしていてよく管理職以上の方から「社員のモチベーションが上がらず、どうしたら良いでしょうか?」というご質問をいただくことが多い。このような質問に対しての答えは「ない」、何故ならモチベーションを主語にしているかぎり、良い方法は見つからないと思う。原因の所在が曖昧になり、どこをどう改善すればいいか、皆目見当がつかなくなる。部下が何を思っているかを常に気に留め、目を配り、「あなたならどうする?」と声をかけ、気づかせないと、自分が主語にならない部下の集団になってしまう。そうすると仕事上での行き違いが生じて、生産性がダウンする。自分が主語に出来るように導き、気づかせれば生産性は加速度的にアップし、モチベーションも上がってくるものだ。
自分が何故モチベーションを高められなかったかと転換してみることが大切である。上手くいった時はそれに満足するだけで、成功要因を体験値としてストックしていなかったからではないか。失敗した時のシーンが頭にあるからではないだろうか。自分を主体に掘り下げれば、その理由は全て自分自身の中に見つけられるはずだ。
自分を主語ににしよう、他責はやめよう、「・・・だったから」の口癖を止めるだけで、かなりの気づきが芽生えてくるものだ。
もちろん管理職自身も主語が自分でなければならないことは言うまでもない。

2018/10/01 06:41 |

2018年10月15日

世の常(ビジネスサプリメント708号)

先日の日経新聞の風見鶏に歴史上の人物で、自分の部下にしたい人は誰ですか、という立命館アジア太平洋大学の学長出口治明氏はこんな問いを経営者らに投げかけたという記事があった。ブルータスや明智光秀など裏切り者は避けるとして、どんなタイプがほしいか。素晴らしい内容だったので少しご紹介する。
「この質問を周囲から聞かれた安倍晋三首相は明治期の陸軍軍人、児玉源太郎氏を挙げたという、児玉氏は日露戦争で満州軍の総参謀長として大山巌総司令官を補佐し、勝利の立役者となった、桂太郎首相らに早期講和を唱ええるなど情勢を冷静に判断したことでも知られ、軍事と政治の両面に通じた、要は上司に仕える部下の立場で職務を果たした」とある。
また出口氏は中国の魏徴(ぎちょう)を部下として推す、「上司の悪口を言い続ける人、悪口を毎日言ってくれるので、上司は誤ることはない、仕事が楽だろうなあ」と極端なコメントをされている。
私はいつも「甘言より諫言」が大切だと痛切に感じている。すなわち「持ち上げる甘い言葉ではなく、いさめる厳しい言葉」を言ってくれる部下が必要なのだ。自分のパワーがある時は何も感じず、甘い言葉に惑わされることが多かった、しかし破綻すると「甘言」の人達はもう私の後ろにはいないという経験もしたが、「諫言」の人達は最後まで支えてくれる、見抜けなかったのは自分自身に人を見る目がなかったからであろう。
リーダーが周りをYESマンばかりで固めると極めて危険な状態になることは言うまでもない。
今流行りの「忖度<そんたく>」がどうしても働くことが多く、部下の反対意見には耳を傾けなくなるものだ。部下は何か言うと睨まれるという気持ちが働くことは組織崩壊の原因の一つだ。
またこの記事のまとめには太宗の言行録「貞観政要」に「トップは安泰になると気を緩めて聞く耳を持たなくなり、国が滅びる、リーダーがイエスマンばかり集めないように心がけても、時間がたつといつのまにかと増えてしまうのは、古今東西の世の常である」という部分に共感した。現実に今の世の中で起きていることに、つい結びつけてしまうのは私だけだろうか。

2018/10/15 06:28 |

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