一生に一度はやってみたい仕事に「オーケストラの指揮者」をあげられることが多い。大阪のシンフォニーフォールはステージが少し前に出ているので、ステージの後ろ席から観覧したことがあった。普通は演奏中の指揮者の後ろ姿しか見えないが、後ろ席は顔が見え、全く違った環境で音楽を聞くことが出来る。指揮者が大きくタクトを振り、湧き出る力強いパワーや、緩やかな部分は非常に優しい顔をされているのが良く分かるのである。指揮者の表情やしぐさと共に音楽を楽しめる。
ある世界的に有名なマエストロ<指揮者を尊敬した言葉>曰く
「指揮者の仕事は、単にタクトを振るだけではない、その楽団の成長戦略を練り、採用オーディションに立ち会い、自らメディアに出るなど先頭に立って組織を売り込むこともする」と言われていた。特に首席指揮者のように楽団に対して大きな責任を持つ立場の指揮者は、経営者的な役割を果たすことが求められている。まさに企業のCEOに似ているではないか。
良い指揮者の条件は2つあり、一つは音楽に関する才能、もう一つは人としての資質だそうだ。同じ演奏でも指揮者が違うと全く違った演奏になるのも何となく分かる気がする。
指揮者のリーダーシップを企業組織のリーダーシップと比較してみるといろいろなことが考えられる。指揮者はオーケストラの全ての楽器を演奏出来るわけではなく、奏者を束ねることをしなければならない。楽団員のモチベーションを高め、素晴らしいことは褒めたり、しかしその後の指摘をしたりと、まさに組織のリーダーと同じである。指揮者が威圧的な態度だと奏者の気持ちも落ち込み、演奏にも響いてくる。力を入れる時と、やや緩やかな時の峻別も非常に難しいものだろう。
私も大きな組織の指揮をとったことがあるが、それぞれの仕事内容の経験はなくても、如何に一体感を醸成しまとめ上げることが出来るかが問われた。
メンバーそれぞれの特性や、体調管理や得意分野を把握は言うまでもない。
忘れてはいけないのは、楽団にコンサートマスターが存在し音合わせをするが、企業にもコンサートマスター的な存在は不可欠だと思う。
要は指揮する人と、メンバーとの信頼関係なくして良い成果を出すことは出来ないのである。
2018/11/15 08:24