思考停止(ビジネスサプリメント734号)
以前ある新聞に大手航空会社の客室乗務責任者のお話が掲載されていたのを思い出した。
羽田から伊丹便のチーフパーサーの時、サンドイッチを持ち込まれた男性を見つけたらしい。エリートビジネスマン風の方で、温かいコーヒーとおしぼりを差し上げたら、必ず喜ばれると思われて早速サービスされたそうだ。ところがそのビジネスマンは「私はコーヒーが大嫌いなんだ!」と拒否されたとか。
搭乗後のミーティングでそのチーフパーサーは「サービスに正解はない」ということを話されたそうである。いろいろなケースがあり、その場に応じた対応が大切とコメントされたらしい。だからお客様からクレームがきても、頭ごなしに部下を叱らないようにしているとのこと。「そんなことをしてはダメ!」、叱った途端、「頭の中が真っ白」になり、思考が止まりもうそれ以上のサービスをしなくなるものだ。
筆者もお店の閉店時、お客様のお見送りをしている時、重そうなお荷物の時は、大きなサービス紙袋を差し上げたところ、「いらない!」と断られた時があった。また店内をご案内しようとしてエスコートしたところ「私が行くから結構!」と言われた時もあった。ことほど左様にマニュアル通りのサービスでは通用しない時がある。こちらの思いは、相手の思いとは限らないのである。数々の企業をご支援していて感じるのは、トップが感情的に決めつけて「強く叱責」して「よく考えろ!」と言われる場面に遭遇したことも多かった。
そうすると部下は言われた時点で「思考停止」してしまうものなのだ。相手が何を考えているのかを把握して、部下が何故そのような行動をしたのかを思いめぐらせて「気づかせる」ことが大事なのは言うまでもない。管理職が権威を振り回して部下を罵倒叱責しても「思考停止」になってしまい、最終は言われたことだけしか出来ない指示待ち人間になってしまう恐れがある。何故なら
余計なことや言われないことをして叱責されたくないからである。そうするとその組織はお客様を見ず上司の顔しか見ないようになってしまう、結果的にお客様は離れていくしその人材も成長しなくなる。まさに「内向き、上向き」集団になってしまったら大変である。
大切なことは「相手の思い」を感じ取り、的確な言葉で相手に「気づかせる」
マネジメントが、イキイキ職場を作るのである。
2020/02/01 09:04 | パーマリンク