捨てるもの・守るもの(ビジネスサプリメント735号)
人は変わろうとする時、捨てるものと守るものの両方を考えなければならない。人生の踊り場から次のステップへ踏み出すために、自己分析が必要である。
まずは捨てるものから、「モッタイナイ」が国際的になったようだが、思いきって捨てたいものは何か?それは「プライド」ではないだろうか。良い意味での職人気質や誇りは大いに持っていたいが、自分の転身に邪魔になるようなプライドはどんどん捨てていきたいものだ。「部長までやったのに」「専務として大勢の部下を使っていたのに」というような、つまらないプライドは捨てていこう。これは自暴自棄になることとはまた違う。ついつい「景気が悪いから」「あの人のせいで」と口にしてしまう「他責」と「言い訳」も捨ててしまおう。
「他責」にしてしまえば楽であるが、次へ進めない。自分のこととして考えればシンプルに整理が出来る。この時の「捨てる技術」はきっと後々まで役に立つものだ。年末に大掃除しても、まただんだんと不要の品が増えていくように、心も同じではないだろうか。
一方守るべきものは何だろうか?自分を守れるのは自分だという誇りである。自分自身の過去に得た本質的な学びも携えていきたいものだ。これは過去にこだわることとは別の意味である。例えばその守るべきものは、幼い頃両親や周りの人に学んだことではないか。人の悪口は言わない、困ったことは助け合う、というような学びである。学生時代に夜が明けるまで友人と語り合った熱い思いや理想ではないだろうか。部活動での努力は必ず報われると信じた青い気持ちである。どの学びにもその時々の真実がある。これらはこれからの人生にもまさしく役に立つはずである。信念、生き様、熱い思いなどは守り続けたい。
自分が自分であるためのシンプルな条件である。肩書がなくなっても自分であるが、生き方を曲げては自分でなくなる。捨てるもの、守るもの、変わるもの、変わらないものを、人生100年時代を迎え、峻別する知恵を持ちたいと思う。
2020/03/01 09:12 | パーマリンク