欲求の段階説(ビジネスサプリメント745号)
マズローの欲求5段階説は有名な理論である。低次の欲求が満たされない限り高次の欲求は満たされないというものである。
まず①生理的欲求(生きていくための根本の欲求)②安心安定の欲求(安全でありたい、安定したいという欲求)③社会的欲求(他者と関わりたい、組織に帰属したいという欲求)④自我の欲求(他から認められたいという欲求)⑤自己実現の欲求(自分の能力を発揮し、成長したいという欲求)に分かれ次元が上がっていく。
実は筆者も「なるほどなぁ!」と思いを新たにしたことがある。それは4半世紀前の「阪神淡路大震災」である。ガス・水道・電気は壊滅、多くの尊い命が奪われた。まずは「生理的欲求」だった。水が出ない、ガスがつかない、電気もつかない状況、食品もままならない。多くのボランティアの方々からの炊き出し、弁当支給などお世話になった。また他府県からの給水車で随分助けられたのである。まさに「生理的欲求」の次元である。インフラも回復してくると今度は「余震はこないか」「病気にならないか」など安心安定の欲求である。徐々に落ち着いてくると他者と関わりたい、会社や地域との連携や関わりを持ちたいという「社会的欲求」になってくる。「自我の欲求」や「自己実現」の欲求はかなり後になる。
人間一つの組織にどっぷりとつかると、おそらく「ユデ蛙」になってしまうことが多い。逆に言えば属しておれば「安全」だと思う社会的欲求の帰属意識が強く働く怖さがある。
今の時代何が起こるか分からない。何時大震災が起こるかも知れないし、倒産するかも知れない。現に予期せぬ「コロナショック」が起きた。この意味での安全安定や社会的欲求は偽りのものと気付かなければならない。偽りのものからは高次の欲求にはつながらない。筆者も一つの組織から離れて再びこの思いを強く持ったのである。
今の時代、組織から離れることはマイナスではないし、要は閉塞状態になっても「自分のビジョン」を明確に持ち、ひたすら進んでいくことこそが高次の欲求に近づくのではないだろうか。
2020/12/01 07:46 | パーマリンク