人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2019年11月 1日

画竜点睛(ビジネスサプリメント728号)

「画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」という言葉がある。一般的には「頑張って描いたのに最後の最後で瞳(ひとみ)を入れるのを忘れていた、9分9厘出来ているのに肝心の1点が足りない」ことと理解されている。しかしルーツをたどれば、次のようなことらしい。昔中国に張という画の名人がいた。ある時、今にも天に昇ろうかという2匹の竜を書き上げた。ところが名人は、いっこうに瞳(ひとみ)を入れる様子がない。不思議に思い、目を入れて欲しいと皆が言うと「それは困る、せっかくの竜が天に昇ってしまう」と名人は言う。いくら何でもそれはないだろう。慢心だ、怠けているのだと皆本気にせず、点睛をせがんだ。しかたなく名人がしぶしぶ筆を入れると、瞬く間に激しい雷鳴がとどろき、天に昇って行ったという。絵の中には1匹のみが残ってしまった。名人が描いたのはまさに竜の魂であったということなのだ。竜の意味を理解し、魂を宿し、最後に点睛を行うという話から生まれた言葉だ。
企業において、瞳を点じるのは個々の現場の社員であることを忘れてはいけない。経営者は真剣に竜を描いたが肝心の点睛がなされず、天に昇らないということになっていないだろうか。それなりのプロジェクトを作り、建前上は立派な経営計画を作っているが、そんな企業ほど「不祥事」が発生するのは何故だろうか。
当面の数字に追われ、コンプライアンスが叫ばれているのに、まぁどこでもやっているという意識が働くのではないだろうか。
どうすれば竜に魂を吹き込めるのか?その解は社員1人1人が「自由にモノが言え「ワイワイ・ガヤガヤと話せる風土」があればいいのだと思う。何だ、そんな単純なことかと言われそうであるが、筆者はさまざまな企業のお手伝いをしながら、実際は自由にモノが言い合える環境や風土にはそうそうお目にかかったことが少ない。「上向き内向き」企業病におかされているケースが圧倒的に多いのが現実である。
竜に点睛、それは小手先の技術ではとても出来ないことなのである。よって社員と経営者が一体となり「気楽にまじめな話」が出来る風土づくりをして、点睛をすべき時が来ている。


2019/11/01 08:23 |

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